フリーペーパーの代名詞と言っても過言ではないリクルートの「ホットペッパー」その成功までの軌跡を”ここまで出しちゃっていいの?”というくらい書いているのが『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方 』
新規事業の成功ノウハウ本かと思って読み始めましたが、意外にもホットペッパーが生まれたきっかけから赤裸々に事業の問題点から成功にいたるまでの試行錯誤とその結果が描かれた1冊でした。
不採算事業からはじまったホットペッパー
売上数百億円、スタッフ数は契約社員や業務委託社員まで含めたら数百人はいるホットペッパーの事業ですが、もともとは「サンロクマル」という別の不採算事業の立て直しからはじまったそうです。
「サンロクマル」事業の中にはリクルートの事業統括側と現場のメンバーとの対立があり、事業運営の血流不全とでもいうべきでしょうか。事業をよくする施策は現場まで降りていかないし、現場の声も統括に届かない状況だったそうです。
しかし、平尾勇司氏が「サンロクマル」の構造改革を断行。商品企画、経営企画、〇〇企画・・・と事業統括側に散在していたよくわからない部署を一個にまとめ、平尾氏がすべて統括する形にしたり、そしきをフラットにする目的で事業統括という名前を廃止して、オフィスの入っていたビルの名前「東海堂」と呼ぶことにしたりと様々な改革を成功させてそしきの血流をどんどん良くしていった話は読んでいてワクワクが押されられなくなりました。
仕組みや型があるから創意工夫が生まれる
「リクルートは仕組み化するのがうまい」とよく聞きます。本書でも色々な仕組みを作って業務を効率化させていく話がでてきます。
この中でひとつ自分にとって大きな学びだったのが、仕組み化=ラクに仕事する仕組みではなく、仕組み化=社員がより頭を使って創意工夫するためのツール。という事でした。
人間、人によってムラがあるので、本来考えなくても良いことまで時間を使って考えすぎてしまったり、逆にちゃんと考えなければいけないところをサボってしまったりということがありますが、仕組みによって考え方のフレームを作ってやることで、考えなければならないポイントを徹底的に考えられ質の良い仕事ができるんですね。
そのひとつが「プチコン」という仕組みでした。単に「ホットペッパー」の広告枠を売るだけの営業ではあまり価値がでませんし、買う気も起きません。しかし、お店の売上をあげる方法のコンサルまでついていたら商品価値は高まります。
ホットペッパーでは全国の数千人という読者から取得したアンケート結果がありました。そのデータを活用すれば、例えば、あるイタリアンレストランが20代OLの集客数を増やすためにはどんなメニューをつくれば良いかなどを考えることができました。
今で言うビックデータの活用みたいなことをして、お客さんの飲食店にコンサルをしてホットペッパーを売りました。それが「プチコン」という仕組みでした。「こんなデータがあるので、こんな商品メニューをホットペッパーで訴求したらお客さんが増えますよ!」という売り方で全国の営業がバンバン広告枠を売っていったそうです。
「プチコン」の例は一例ですが、本書では営業が商品に付加価値をつけて売れる仕組み、働いているメンバーが事業を楽しんで働ける仕組みの2方向でいろいろな施策が紹介されていました。どれもシンプルにまとめられており読みやすく、参考になりました。
『Hot Pepperミラクル・ストーリー―リクルート式「楽しい事業」のつくり方 』一読の価値ありです。